社内デザインコンペでオリジナルグッズを作る方法|社員公募の募集要項・応募規約と著作権・審査と投票の設計まで、製作できるデザインに仕上げる進め方2026

社内デザインコンペでオリジナルグッズを作る方法|社員公募の募集要項・応募規約と著作権・審査と投票の設計まで、製作できるデザインに仕上げる進め方2026

木のテーブルの上で、紙に描いたデザインのラフにペンで書き込んでいる手元

締め切りの翌朝、会議室の壁に応募作が貼り出される。コピー用紙に鉛筆で描いたもの、タブレットで仕上げたもの、付箋に一言だけ書かれたコンセプト。昼休みになると、普段は話さない部署の人たちがその前で立ち止まり、「これ、経理の◯◯さんらしいよ」と言い合っている。

社内デザインコンペのいちばんの成果は、選ばれた一案ではなく、この壁の前の時間だと思う。

ただ、勢いで始めると後で困る。投票で1位になったデザインが細かすぎて刺繍にできない。応募した社員が退職したあとで、デザインを使い続けてよいのか分からない。応募が5件しか集まらない。この記事では、社員公募でオリジナルグッズを作るときの段取りを、募集要項、応募規約と著作権、審査と投票、発表のしかたまで順に整理した。製作する側の目線で「作れるデザイン」に落とし込むコツも書いている。

社員公募でグッズを作る意味

外部のデザイナーに頼めば、仕上がりは早く、品質も安定する。それでも社内公募を選ぶ会社があるのは、完成したグッズに「自分たちで決めた」という記憶が残るからだ。

自分が一票を入れたTシャツは、クローゼットの奥にしまわれにくい。同僚が描いたロゴのステッカーは、ノートPCに貼られる。グッズは配った瞬間ではなく、使われ続けるあいだに会社への愛着を少しずつ育てていく。コンペは、その使われる理由を作る前に仕込んでおく方法と言える。

向いているのは、周年記念、社名変更やリブランディング、オフィス移転、全社キックオフのように、会社の節目を全員で迎えたい場面だ。新しい社名やロゴを社内に根づかせたいときも、デザインを考える過程そのものが浸透の機会になる。

始める前に決めておく5つのこと

募集を告知する前に、次の5つを事務局で決めておく。ここが曖昧なまま走ると、審査の段階で「そもそも何のためのデザインか」がぶれる。

項目 決めること 決め方のヒント
目的 何の節目に、誰に向けて作るか 「創業20年を全員で祝う」「新しいバリューを日常で目にする」など一文で言える形にする
アイテム Tシャツ、トートバッグ、ステッカー、マグカップなど アイテムで使える色数や表現が変わる。先に決めると応募者が描きやすい
応募できる人 正社員だけか、契約社員・アルバイト・グループ会社も含むか 「全員の節目」をうたうなら、対象を広げたほうが筋が通る
スケジュール 配布したい日から逆算した締め切り 募集から納品まで3か月前後を見ておく(後述)
予算 製作費と、表彰・賞品の費用 製作数とアイテムの単価で概算を出し、稟議は募集前に通しておく

募集要項に書くこと

募集要項は、応募のハードルを下げる文書であり、後のトラブルを防ぐ文書でもある。両方の役割を意識して書く。

テーマと「らしさ」の手がかり

「自由にデザインしてください」だけでは、多くの社員は手が止まる。ミッションやバリュー、社内でよく使われる口ぐせ、創業時のエピソード、オフィスの窓から見える景色など、描く材料を要項に添えておく。クレドカードや周年ロゴのような既存のツールがあれば、それも参考資料として渡す。

デザインの条件

アイテムごとに、使える色数、デザインを入れる位置と大きさ、ロゴの入れ方のルールを書く。たとえばシルクスクリーン印刷は色の数だけ版を作るので、色数が増えるほど費用が上がる。刺繍は細い線や小さな文字がつぶれやすい。こうした制約を最初に伝えておくと、投票で選ばれた案を大きく直さずに済む。

応募方法と形式

手描きのラフでも応募できるようにする。ここを外すと、応募者がデザインソフトを使える人に偏る。最終的な入稿データは、選ばれた案をもとに社内のデザイン担当か製作会社が仕上げればよい。応募時に添えてもらうのは、作品と一緒に「なぜこのデザインにしたか」の短いコメントだけで十分だ。このコメントが、あとで発表のときに効いてくる。

応募規約で決めておく、権利の扱い

社内公募でいちばん見落とされやすいのが、デザインの権利だ。

会社の指示で業務として作り、会社名義で公表するものは、職務著作として会社が著作者になる場合がある(著作権法第15条)。ただし、任意参加で勤務時間外にも描けるコンペの応募作は、この条件に当てはまらないことが多い。その場合、著作権は描いた社員本人に残る。退職した社員の作品を使い続けたいとき、別のアイテムに展開したいとき、形を少し変えたいときに、本人の許可が要ることになる。

そこで、応募の条件として権利の扱いを応募規約に書き、応募をもって同意したものとする形をとるのが一般的だ。

応募規約に入れておきたい項目
・採用作品の著作権(著作権法第27条・第28条の権利を含む)を会社に譲渡すること
・作者は会社と会社が許可した者に対して、著作者人格権を行使しないこと
・会社がデザインを修正・展開して使えること(色や形の調整、別アイテムへの使用)
・作者名を表示するかどうか、表示する場合の範囲
・応募作は自作で、他人の著作物・商標・キャラクターを使っていないこと
・フォントや素材を使う場合は、商用利用が許されたものに限ること
・画像生成AIを使ってよいか、使う場合の条件
・不採用作品の権利は作者に残ること、会社が社内で紹介に使う範囲

27条(翻訳・翻案権)と28条の権利は、譲渡の契約でわざわざ名前を挙げないと譲渡した側に残ると推定される(著作権法第61条第2項)。グッズでは形を整えて使うことがほとんどなので、ここは省かないほうがよい。社外にも使うロゴにするなら、商標の先行調査も早めに済ませておく。規約の文面は、法務担当や弁護士に一度見てもらうと安心だ。著作権の基本はこちらの記事でも整理している。

審査と投票の設計

選び方を決めておかないと、「結局、上が決めたんでしょ」という空気が残る。逆に全員投票だけにすると、製作できない案や目的からずれた案が選ばれることがある。

投票の前に、製作できるかを確かめる

全員投票にかける前に、事務局と製作会社で応募作を一度見て、そのままでは作れない点を洗い出しておく。製作できない案を候補に残すと、選ばれたあとで大幅な修正が入り、作者も投票した人もがっかりする。

デザインの要素 製作で起きやすいこと 調整の方向
グラデーション・写真 シルクスクリーンや刺繍では再現できない フルカラー印刷に切り替えるか、色を段階に分ける
細い線・小さな文字 印刷でかすれる、刺繍でつぶれる 線を太くする、文字を減らす、デザインを大きく配置する
色の数が多い 版の数が増えて費用が上がる 3色程度にまとめる、近い色を統合する
コーポレートカラーの指定 画面で見た色と仕上がりがずれる 色見本や指定色で合わせる。校正で実物を確認する
手描きのラフ そのままでは入稿データにならない 選ばれた後に清書する。作者に確認してもらいながら進める

調整が必要な案は、落とすのではなく「この形なら作れる」という修正案を添えて作者に返す。作者が納得したうえで候補に残せば、投票の公平さも保てる。

審査基準を先に公開する

何を基準に選ぶかを、募集の時点で伝えておく。基準が見えていると、応募する側も目的に沿って描ける。

基準 見ること
らしさ 自社のミッションやバリュー、文化が伝わるか
使いたくなるか 休日にも身につけたい、デスクに置きたいと思えるか
長く使えるか 流行に寄りすぎず、数年後に見ても古びないか
製作できるか アイテムと予算の条件の中で形にできるか

投票と審査を組み合わせる

よく使われるのは、事務局と製作会社で候補を5案前後に絞り、全社員の投票で決める形だ。投票と経営陣・審査員の評価を半分ずつ合計する方法もある。どちらにしても、配点と決め方は投票の前に公開しておく。オンラインのフォームで投票しつつ、オフィスの壁にも実物大で貼り出すと、画面では伝わらない大きさや色の印象を確かめてもらえる。

オフィスのグレーの壁に貼った色とりどりの付箋を、2人が見ながら話し合っている

発表のしかたで、グッズの使われ方が変わる

結果は、メールで一行だけ流すより、全社の集まりで作者を紹介したい。応募時に書いてもらった「なぜこのデザインにしたか」を本人に話してもらうと、グッズを受け取った人がそのデザインを人に説明できるようになる。説明できるグッズは、よく使われる。

完成品には、デザインの由来を書いた小さなカードを添える。作者の名前と短いコメントがあるだけで、ただのロゴ入りグッズとは受け取られ方が違う。

選ばれなかった案も、そのまま眠らせない。社内報で全応募作を紹介する、人気のあった案をステッカーにして配る、次回のアイテムで採用候補にする。応募したことが報われる仕組みがあると、次のコンペにも人が集まる。

賞品は、記念の盾やデザインしたグッズの特別版など、モノで渡すと記憶に残りやすい。金銭や商品券を渡す場合は給与として課税対象になることがあるので、事前に経理と確認しておく。

スケジュールの目安

配布日から逆算して、3か月前後を見ておく。年末年始や繁忙期をまたぐなら、さらに余裕をとる。

時期 やること
配布の約3か月前 目的・アイテム・予算を決め、製作会社に条件を相談する。応募規約を作る
約2か月半前〜2か月前 募集を告知し、3〜4週間ほど応募を受け付ける
約2か月前 製作できるかの確認、候補の絞り込み、作者への修正相談
約1か月半前 全社投票と審査、結果発表
約1か月半前〜納品 清書と入稿、校正・サンプル確認、量産と検品

量産にかかる期間はアイテムと数量で大きく変わる。刺繍の入ったアパレルや、木や陶器のように加工の工程が多いモノは、早めに製作会社と期間をすり合わせておく。

よくある質問

応募が集まらなかったらどうしますか

応募のハードルを下げるのが先だ。手描きOK、コンセプトの言葉だけでもOKにする。部署やチーム単位での応募を認める。昼休みにラフを描く会を開いて、紙とペンを用意しておく。言葉だけの応募は、選ばれたあとにデザイナーが形にすればよい。

デザインの経験がない社員ばかりでも成り立ちますか

成り立つ。コンペで集めたいのは完成度の高い絵ではなく、社員が自社をどう見ているかという視点だ。仕上げはプロが担当すると決めておけば、応募する側も気軽に参加できる。ロゴ入りグッズを安っぽく見せないポイントは、清書の段階で押さえれば間に合う。

選ばれた案を、プロのデザイナーが直してもいいですか

応募規約で修正できることを決めておけば問題ない。ただ、変える範囲が大きいときは作者に相談し、どこを残してどこを整えたかを伝える。作者の意図が残っていることが、社内公募で作る意味そのものだからだ。

周年ロゴも社内公募で決められますか

決められる。ただし周年ロゴは名刺や資料、Webサイトにも長く使うので、グッズより条件が多い。周年ロゴの作り方で使用ルールまで整理してから募集するとよい。

選ぶ過程ごと、会社の記憶にする

社内デザインコンペは、手間のかかるやり方だ。募集要項を書き、規約を整え、応募作を一つずつ見て、作者と話しながら仕上げていく。外に頼めば一週間で終わるデザインに、3か月かける。

それでも、壁に貼られた応募作の前で交わされた会話や、自分の一票が形になったTシャツは、数年たっても社内で語られる。グッズを「とりあえず」作るのではなく、作る過程も含めて会社の記憶にしたいとき、社内公募はよく効く方法だ。

GoodCulturesでは、アイテムと条件の整理から、応募作が製作できるかの確認、清書・入稿、サンプル確認、量産までを自社工場と連携して進めている。コンペの段取りから相談したいときも、気軽に声をかけてほしい。

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