クレドカード・バリューカードの作り方|行動指針を「持ち歩ける言葉」にするサイズ・紙・加工の選び方と、配って終わらせない浸透の設計2026
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週明けの朝会で、マネージャーが新しく入った若手の判断をほめた。「それ、うちの三つ目のバリューそのものだね」。言われた本人は、社員証の裏に差していたカードを取り出して、少し照れながら読み返していた。
行動指針は、思い出せる場所にあって初めて使われる。
クレドカードやバリューカードは、会社の理念や行動指針を、名刺ほどの大きさに収めて一人ひとりに持ってもらうためのモノだ。作ること自体は難しくない。けれど、配った翌月には引き出しの奥、ということも珍しくない。この記事では、カードに載せる言葉の削り方から、サイズ・紙・加工の選び方、そして日々の仕事の中で取り出される仕組みまで、作る側が決めておきたいことを順に整理した。
クレドカード・バリューカードとは
クレド(credo)はラテン語で「私は信じる」という意味の言葉で、企業が大切にする信条や行動の約束を指す。それを携帯できるカードにしたものがクレドカードだ。呼び方は会社によってさまざまで、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を載せたものを「バリューカード」「MVVカード」、行動のルールを中心にしたものを「行動指針カード」と呼ぶことも多い。
どの呼び方でも、役割は同じ。壁に貼るポスターや社内ポータルのページと違い、本人の手元にあり、迷ったときにその場で開ける。そこに価値がある。
| 種類 | 主に載せる内容 | 向いている会社・場面 |
|---|---|---|
| クレドカード | 信条、顧客や仲間への約束、行動の基準 | 接客・サービス業など、現場ごとの判断が多い組織 |
| バリューカード(MVVカード) | ミッション・ビジョン・バリューと、各バリューの短い解説 | 理念を刷新した直後、組織が急に大きくなっている時期 |
| 行動指針カード | 具体的な行動の例、判断に迷ったときの問い | 多拠点・多職種で、判断の基準をそろえたい組織 |
| バリューごとの分割カード | 1枚に1つのバリュー。裏面に行動の例 | 表彰やピアボーナス、1on1の場で1枚ずつ使いたいとき |
作る前に決める3つのこと
誰が、いつ、どこで取り出すのか
最初に決めたいのは、デザインより使われる場面だ。社員証と一緒に首から下げて店頭で使うのか、財布に入れて営業先で見返すのか、デスクに立てて置くのか。場面によって、ふさわしいサイズも紙の強さもまったく変わる。
おすすめは、実際に使ってほしい場面を3つ書き出しておくこと。「新人が初めてお客様に謝るとき」「部署をまたいだ判断で意見が割れたとき」。具体的に書くほど、カードに載せる言葉も選びやすくなる。
載せる言葉は、理念の全文ではない
理念の資料をそのまま縮めて載せると、文字が小さくなり、誰も読まなくなる。カードに載せるのは、全文のうち「迷ったときに思い出してほしい一行」だけでいい。詳しい背景は、社内ポータルや冊子に任せる。カードは入口だと割り切ると、言葉が削りやすくなる。
目安として、名刺サイズの片面に無理なく収まるのは、見出しを含めて5〜7項目、1項目あたり30〜40字程度まで。これを超えるなら、二つ折りにするか、バリューごとにカードを分けることを考えたい。
誰の言葉で書くか
経営陣が決めた言葉をそのまま刷るより、現場の社員が実際に使っている言い回しを拾って行動の例に入れると、カードは一気に「自分たちのもの」になる。ワークショップで「このバリューを体現していた人の行動」を集め、裏面の例文に使う会社も多い。
・その一行だけを読んで、具体的な行動が思い浮かぶか
・入社1週間の人が読んでも意味がわかるか(社内用語や略語に頼っていないか)
・「〜しない」より「〜する」の形になっているか
・声に出して読んだとき、言いにくい言葉が入っていないか
サイズと形の選び方
持ち歩くモノなので、サイズは「どこに入れるか」から決める。日本の名刺は91×55mm、クレジットカードや社員証によく使われる大きさは85.6×54mm(ISO/IEC 7810のID-1規格)。わずかな差だが、どちらに合わせるかで入る場所が変わる。
| 形 | 仕上がりサイズの例 | 向いている使い方 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 名刺サイズ(1枚もの) | 91×55mm | 名刺入れや手帳に入れて持ち歩く | 載せられる文字量が少ない。項目は絞り込む |
| カードサイズ(1枚もの) | 85.6×54mm | 社員証ケースの裏や財布のカード入れに差す | 社員証ケースの内寸を先に測っておく |
| 二つ折り | 開いて182×55mm前後、折って名刺サイズ | MVVとバリューの解説を両方載せたい | 折り目の割れを防ぐため、厚い紙では筋押しを入れる |
| 三つ折り・蛇腹折り | 開いて273×55mm前後 | 行動の例やストーリーまで載せたい | 厚くなり、ケースに入りにくい。紙は薄めを選ぶ |
| バリュー分割(複数枚セット) | 名刺〜はがきサイズを5〜7枚 | 表彰、1on1、会議のアイスブレイク | 枚数が増えるぶん、まとめる帯や箱の設計が要る |
社員証ケースに入れる前提なら、試作の段階で実際のケースに差して確かめておきたい。ケースの内寸が名刺サイズに足りず、角が引っかかって入らない。そうした行き違いは、刷ってからでは直せない。ケースやストラップを合わせて作るなら、ネックストラップ・社員証ホルダーの作り方も参考になる。
紙と加工の選び方 ── 毎日触っても傷まない仕様に
クレドカードは、名刺よりもずっと長く、何度も出し入れされる。紙選びでいちばん大事なのは、見た目の上質さより「半年後にどうなっているか」だ。
| 仕様 | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 厚手の上質紙・マット紙 | 書き込みしやすく、コストを抑えやすい。角が傷みやすい | まず全社に配って反応を見たいとき |
| マットPP加工・グロスPP加工 | 表面にフィルムを貼り、水や擦れに強くなる。マットは落ち着いた手触り | 店舗や工場など、手が濡れたり汚れたりする現場 |
| ファインペーパー(風合いのある紙) | 紙の質感でブランドの印象を伝えられる。PP加工とは相性を確認 | 理念の刷新、周年など、節目に一度だけ贈るカード |
| PET・プラスチックカード | 折れや水に強く、長く持てる。紙より単価は上がる | 何年も持ち歩いてほしい、社員証と一体で使いたい |
| 再生紙・FSC認証紙 | 環境への配慮を素材で示せる。色の出方は試作で確認 | サステナビリティをバリューに掲げている会社 |
加工では、角を丸く落とす「角丸」をおすすめしたい。名刺入れやケースの出し入れで角が折れにくくなり、手に当たったときの感触も柔らかい。ロゴや一番大事な一行だけに箔押しや空押し(エンボス)を入れると、全面を派手にするよりも、言葉そのものに目が行く。
カードは手元で読むものなので、本文は7〜8pt以上を目安にしたい。濃い色の紙に白抜きの細い文字を小さく載せると、印刷でつぶれたり、暗い場所で読めなかったりする。小さな文字ほど、背景との色の差をはっきりつけておく。
デザインと入稿で気をつけること
表面にはロゴとミッション、裏面にバリューと行動の例。迷ったらこの分け方がいちばん読みやすい。社員証ケースに差したときに見える面と、取り出して読む面を分けて考えると、レイアウトも決めやすい。
入稿データでは、仕上がりの外側3mmの塗り足しと、文字を断裁位置から3mm以上内側に置くことが基本になる。小さなカードほど、断裁のわずかなずれが目立つ。二つ折り・三つ折りの場合は、折り位置をまたぐ文字や罫線がないかも見ておきたい。データの作り方は入稿データの作り方で詳しくまとめている。
コーポレートカラーを正確に出したい場合は、PP加工の有無でも色の見え方が変わる点に注意したい。フィルムを貼ると、マットなら少し沈み、グロスなら鮮やかに見える。本番と同じ紙・同じ加工で色を確認するのが確実だ。確認の手順は校正・サンプル確認の進め方を参照してほしい。
配って終わらせない ── 取り出される仕組みのつくり方
カードの価値は、刷った枚数ではなく、取り出された回数で決まる。配り方と、その後の使われ方まで含めて設計しておきたい。
渡し方に、ひと手間かける
全員の机に封筒で置いておくのと、全社会議で代表が言葉の背景を話してから一人ずつ手渡すのとでは、同じカードでも重みが違う。入社時なら、オンボーディングの初日に、上司が自分の体験と一緒に渡すのがいい。オンボーディングキットの中に組み込むのも一つの方法だ。
会議と1on1の「始まり」に置く
朝会や週次の定例の最初に、1人が「今週バリューを体現していた誰かの行動」を一つ話す。1on1の最後に、カードを見ながら次の1か月で意識したい項目を一つ選ぶ。こうした小さな習慣があると、カードは自然と取り出される。
称える場面とつなげる
バリューごとに分割したカードは、表彰やピアボーナスと組み合わせやすい。「挑戦」のバリューを体現した人には、そのカードにひと言を書き添えて渡す。もらった側は、カードが自分の行動の記録として手元に残る。
カードを入れる場所までつくる
持ち歩いてほしいなら、入れる場所もセットで用意したい。社員証ケースの裏に差せるサイズにする、カードが入る名入れの名刺入れを一緒に贈る、デスクに立てられるスタンドをつける。カードケースを合わせて作る場合は名刺入れ・カードケースの作り方も参考にしてほしい。
理念を改定したときのカードの扱い
バリューを見直したり、社名やロゴを変えたりすると、古いカードが手元に残る。新しいカードを配るだけでなく、旧カードを回収するのか、本人に任せるのかを先に決めておくと混乱が少ない。
改定の背景を説明する場で、旧カードと新カードを交換する形にすると、「何が変わり、何は変わらないのか」を一人ひとりが確かめるきっかけになる。リブランディングの全体の進め方は社名変更・リブランディングのカルチャーグッズでまとめている。
なお、カードの右下などに小さく版数や改定年を入れておくと、どれが最新かを見分けやすい。支店や海外拠点で古い版が残りやすい組織では、特に役に立つ小さな工夫だ。
制作の流れと期間の目安
| 工程 | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 1. 言葉の整理 | 載せる項目を決め、一行ずつ削る。現場の行動例を集める | 2〜4週間(言葉が決まっていれば数日) |
| 2. 仕様とデザイン | サイズ・紙・加工・折り方を決め、レイアウトをつくる | 1〜2週間 |
| 3. 試作・校正 | 本番と同じ紙で色と文字の読みやすさ、ケースへの収まりを確認 | 1週間前後 |
| 4. 本生産 | 印刷・加工・断裁。箔押しやPP加工が入ると日数が延びる | 1〜2週間 |
| 5. 納品・配布 | 拠点ごとの仕分け、配布イベントの準備 | 配布日から逆算 |
時間がかかるのは、たいてい印刷よりも言葉を決める工程だ。4月の入社式や期初のキックオフに合わせたいなら、言葉の整理は2〜3か月前から始めておくと、余裕をもって試作まで進められる。
よくある質問
何枚から作れますか
紙のカードなら、数十枚程度の少ない数から作れることが多い。ただし、箔押しなどの版を使う加工は版代がかかるため、枚数が少ないほど1枚あたりの費用は上がる。中途入社者の分も含めて、1年分をまとめて作っておくと割高になりにくい。
紙とプラスチック、どちらがいいですか
まず全社に配り、言葉の手応えを見たい段階なら紙で十分だ。何年も持ち歩いてもらう前提で、言葉が固まっているならPETなどの丈夫な素材が向いている。改定の可能性が高いうちは、作り直しやすい紙から始めるのが現実的だ。
カードだけで理念は浸透しますか
カードは、理念に触れる回数を増やすための道具だ。浸透させるのは、会議や1on1、評価や表彰の場で、実際にその言葉が使われることにある。カードは、その会話のきっかけを全員の手元に置いておく役割だと考えたい。理念を形にする他の方法はMVV浸透を加速するカルチャーグッズの活用事例で紹介している。
英語版や多言語版も必要ですか
海外拠点や外国籍の社員がいるなら、同じデザインで言語違いを用意したい。直訳すると意味が変わる言葉もあるので、翻訳は現地のメンバーに確認してもらうのが確実だ。1枚の表裏で日本語と英語を分けるやり方もある。
小さなカードが、判断の基準を全員の手元に置く
理念は、額縁の中にあるうちはまだ会社のものだ。迷ったときに取り出され、誰かの判断を後押しした瞬間に、ようやく一人ひとりのものになる。
だからクレドカードは、言葉を削ること、毎日の出し入れに耐えること、取り出される場面をつくること。この三つを同じ熱量で設計したい。
GoodCulturesは、B Corp認証を国内51番目に取得した。グループの自社工場で品質を管理しながら、カルチャーグッズの企画からデザイン、素材と加工の選定、検品、納品までを一貫して担っている。理念の言葉をどう削り、どんなモノにすれば手元に残るのか。言葉の整理から試作、配り方の設計まで伴走する。