お歳暮を“自社らしく”贈る方法|法人ギフトのオリジナル化と逆算スケジュール・マナー完全ガイド2026
Share
12月の第2週、ある会社の受付カウンターの奥に、同じ百貨店の包装紙が11個積まれていました。中身はハムが4つ、洗剤が3つ、残りはコーヒーと焼き菓子。総務の方が、送り主の社名を一枚ずつ付箋に書き写していました。
「ありがたいんです。でも正直、どこから何が届いたか、年が明けたら覚えていません」
お歳暮は、1年のお礼を伝える年に一度の機会です。ところが法人間のお歳暮は、届いた瞬間に「その他大勢」の箱の山に入ってしまう。相手の記憶に残るかどうかは、金額より先に、箱を開ける前の数秒で決まります。
この記事では、法人のお歳暮を自社らしいカタチにするための考え方を、基本マナー、オリジナル化の3つの段階、中身の選び方、10月から始める逆算スケジュール、送り先リストと配送の実務まで、パッケージの印刷・製造を自社で行う立場から順に整理します。
法人のお歳暮で最初に押さえる基本マナー
オリジナル化の前に、外してはいけない型があります。ここを崩すと、どれだけ凝ったパッケージでも印象が逆に振れます。
| 項目 | 目安 | 実務での注意 |
|---|---|---|
| 贈る時期 | 12月初旬〜20日頃(関東は11月下旬から贈る会社も増えています) | 相手の年末休業に入る前に着くよう、12月20日までの着を目標にする |
| 金額の相場 | 取引先1社あたり3,000〜5,000円、特にお世話になった先は5,000〜10,000円 | 毎年続ける前提で決める。翌年に下げると目立つ |
| のし | 紅白の蝶結び、表書きは「御歳暮」 | 名入れは会社名、または会社名と代表者名。配送なら内のしが一般的 |
| 時期を過ぎたら | 年明け〜松の内は「御年賀」、それ以降は「寒中御見舞」 | 表書きを差し替えるだけで済むよう、掛け紙は予備を刷っておく |
| 相手が喪中 | お祝いではないため贈ってよい | 紅白の水引を避け、無地の短冊や白無地の掛け紙に変える |
もうひとつ、送る前に必ず確かめたいのが受け取りの可否です。コンプライアンス上、取引先からの贈答品を一律で辞退している会社は珍しくありません。公務員や、公的機関の職員に利害関係のある立場から贈ることも避けます。毎年送っている先でも、方針が変わっていることがあります。
“自社らしい”お歳暮は、3つの段階から選べる
オリジナル化と聞くと、中身から全部つくるイメージを持たれがちです。実際には、既製品のまま見せ方だけ変える方法から、中身を一から設計する方法まで段階があります。予算と準備期間から、どこまで踏み込むかを決めます。
| 段階 | 何を変えるか | 準備期間の目安 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 見せ方を変える | 既製品に、オリジナルの掛け紙・スリーブ・メッセージカードを添える | 3〜4週間 | 今年から試したい。送り先が多く、1件あたりの手間を抑えたい |
| 箱を変える | 中身は既製品のまま、自社デザインのギフトボックスに詰め替える | 1.5〜2ヶ月 | 開封の瞬間で覚えてもらいたい。送り先が数十〜数百件 |
| 中身から設計する | 産地・原料・ラベルまで選び、自社のストーリーと結びつけたセットをつくる | 2〜3ヶ月 | 周年や代替わりの年など、伝えたいことがはっきりしている |
初めての年は、「見せ方を変える」か「箱を変える」から始める会社が多い印象です。箱を変える段階でも、箱の色と書体を会社のトンマナ(トーン&マナー、見た目の決まりごと)に揃えるだけで、受付に積まれた箱の山の中で一目で見分けがつくようになります。
中身は「年末年始をまたぐ」前提で選ぶ
お歳暮の中身選びで見落とされやすいのが、届いてから食べられるまでの時間です。
12月中旬に届いた箱は、相手の会社で年末休業をまたぎます。担当者が開けるのは年明け、ということも普通に起きます。冷蔵品や賞味期限の短い生菓子は、それだけで不安が残ります。
常温で、賞味期限に余裕があるもの
常温保存ができて、賞味期限が届いた日から1ヶ月以上あるモノが基本です。コーヒー、日本茶、焼き菓子、調味料、乾麺などが選ばれやすいのは、この条件を満たしやすいからです。
部署で分けやすい個包装
法人宛てのお歳暮は、担当者ひとりではなく部署やチームで分けられることが多くなります。個包装で数が揃っていると、配る手間がかからず、ひとりひとりの手に社名が届きます。大きな一品より、小分けのセットのほうが喜ばれる理由はここにあります。
自社の本業とつながる理由があるもの
「なぜ、この会社からこれが届くのか」に答えられる中身は、話のきっかけになります。本社のある地域の産品、創業の地のお茶、自社のサステナビリティ方針に沿った素材のパッケージ。理由を一行、メッセージカードに書き添えるだけで、箱の意味が変わります。
食品を自社ラベルで扱う場合は、原材料名・賞味期限・製造者などの表示が必要になります。ラベルに入れるデザインは、表示欄のスペースを先に確保してから決めます。
10月に動き始める、お歳暮の逆算スケジュール
お歳暮の準備は、11月に入ってからでは箱から先のオリジナル化が間に合わなくなります。12月上旬に届けるなら、10月上旬には方向性を決めておきたいところです。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 9月下旬〜10月上旬 | 前年の送り先リストを見直す。予算と、どの段階までオリジナル化するかを決める |
| 10月中旬 | 中身の候補を決め、箱・掛け紙・カードのデザインに着手。部数を仮決めする |
| 10月下旬〜11月上旬 | サンプル・色校正を確認して最終部数を確定。メッセージカードの文面を書く |
| 11月中旬 | 生産・印刷。並行して送り先の住所・担当者名を最新化する |
| 11月下旬〜12月上旬 | 詰め合わせ・のし掛け・発送。12月20日までの着を目標にする |
部数は、確定リストの件数に1割ほどの予備を足しておきます。年末は急な異動の挨拶や、リストから漏れていた先への追加が必ず出ます。後から10個だけ追加で刷るのは、単価が大きく跳ね上がるうえに年末の生産枠が埋まっていて間に合わないことがあります。
送り先リストと配送で、つまずきやすい4つのこと
お歳暮の失敗は、デザインより手配の段階で起きることのほうが多いです。
担当者の異動・退職
1年たつと、宛名の担当者が異動していることがあります。宛名が前任者のままだと、受け取った側が扱いに困ります。営業担当に、11月中に送り先ごとの最新の担当者を確認してもらいます。
相手の休業日に着いてしまう
12月下旬は、相手が休業に入っていて受け取れず、差し戻しになることがあります。配送指定は20日前後までに寄せ、年末ぎりぎりの着日は避けます。
受け取り辞退の先に送ってしまう
先に触れたとおり、贈答品を受け取らない方針の会社は増えています。前年に辞退の連絡があった先は、リスト上で目印をつけて除外します。辞退された先には、年賀状や年始の挨拶訪問で気持ちを伝える形に切り替えます。
送り状とメッセージカードの取り違え
送り先ごとに宛名を入れたカードを同封する場合、封入の取り違えが起きやすくなります。数十件を超えるなら、送り状と同じ並び順でカードを印刷し、照合しながら封入する流れを最初に決めておきます。
贈り終わった後に、来年の準備は始まっている
お歳暮は、贈って終わりにすると毎年ゼロから悩むことになります。届いた後の反応を、営業担当から一言ずつ集めておくと、来年の中身と送り先を決める材料になります。「箱を見てすぐに御社だとわかった」「部署で分けやすかった」といった声が、次の設計の手がかりです。
同じデザインの箱や掛け紙を、年始の挨拶や周年の節目にも使い回せるようにしておくと、1回あたりの制作費も下がります。年末年始の贈答全体の組み立て方はグッズのいろはの季節の挨拶ギフトの記事でも扱っています。自社らしい見え方の揃え方から相談したい場合は、CultureGiftのページもご覧ください。
よくある質問
お歳暮とお中元は、両方贈る必要がありますか
どちらか一方にするなら、1年の締めくくりにあたるお歳暮を残す会社が多いです。お中元を贈っている先に、お歳暮だけ贈らないのは印象がよくありません。続けられる範囲で、贈る季節を決めます。
オリジナルの箱にすると、中身の品質が不安です
箱を変える段階では、中身は既製品のまま使います。詰め替え時の衛生管理や、賞味期限の表示が外から確認できるかどうかは、制作側と事前に取り決めておきます。食品の詰め替えは、個包装のまま箱に入れる形にすると管理しやすくなります。
何件くらいからオリジナル化する意味がありますか
掛け紙やメッセージカードを変えるだけなら、数十件でも十分に効果があります。専用の箱をつくる場合は、版代や最低ロットの関係で、目安として100件前後から1件あたりの費用が落ち着いてきます。件数が少ない場合は、年始の挨拶や周年でも使えるデザインにして、年間の総数で考えます。
今からでも今年のお歳暮に間に合いますか
10月中に方向性が決まれば、箱を変える段階までは間に合う可能性があります。11月に入ってからなら、掛け紙やカードで見せ方を変える方法が現実的です。どこまで間に合うかは部数と中身によって変わるため、早めに相談してください。